[No.01] 木曽ひのき精油成分の消臭機能に関する分子挙動の解析

夢木香では、木曽ひのきから抽出したひのき精油及び木曽ひのき蒸留水が消臭・抗菌作用を有していることを認め、日本食品分析センターや京都微生物研究所による消臭実験、抗菌実験でその消臭効果、除菌効果を確認してきました。ただ、どのような成分がどのようなメカニズムでどのように消臭、除菌しているかということまでは解明されてませんでした。

そこで、2014年より名古屋大学分子・物質合成プラットフォーム 坂口特任教授と共に、木曽ひのき成分の消臭に関わる分子挙動の解析をはじめました。その解析により、消臭メカニズムに関する知見を得、木曽ひのき精油が持つ有用性を明確にすることができるようになり、その特性をさらに引き延ばしていくことが可能となりました。

今回の解析では、悪臭成分としてイソ吉草酸等の有機酸を取り上げ、木曽ひのき精油中の代表的化学成分の消臭能力を個々に比較するとともに、有機酸分子と木曽ひのき精油分子の相互作用を化学分析で捉えることに取り組みました。

木曽ひのき精油を構成する代表的精油成分として、αピネン、αテルピネオール、テルピネン-4-オール、ガジノールを選定し、テドラーバック内のイソ吉草酸ガスに噴霧すると、αテルピネオールが特に消臭力の高い結果となりました。一方、それぞれの精油成分をイソ吉草酸に混合した際のラマンスペクトルを測定すると、αテルピネオール混合系において、イソ吉草酸のカルボニルピークの高派数シフトが観測されました(図1)。

図1.α-テルピネオール(a)、α-ピネン(b)を混合した際のイソ吉草酸のラマンスペクトル変化(差スペクトルによりイソ吉草酸のみのスペクトルで表示)

これは、通常イソ吉草酸2分子はカルボキシル基の相互作用により二分子会合しているが(図2)、ヒドロシル基を持つαテルピネオールにより会合体が解離し、αテルピネオールとより相互作用する状態になっていることを示唆しています。

図2.イソ吉草酸の二分子会合モデル構造

接触表面積を一定にした精油成分に有機酸ガスを共存させると、αテルピネオールではαピネンの倍以上の速度で有機ガスを吸収する結果を示し、有機酸との相互作用が効果的に作用していることが考えられました(図3)。

図3.有機酸ガス分子が大過剰の精油成分等に吸収される挙動の評価

取り込んだ有機酸の保持力評価として、あらかじめ精油成分と有機酸を混合した状態から有機酸分子が気化する挙動を調べたところ、αテルピネオールの系での気化速度が遅く、精油成分の蒸気圧の低さも消臭力に影響している結果となりました(図4)。

図4.精油成分等との混合溶液から有機酸(酢酸)が気化する挙動の評価

比較実験として評価した水でも有機酸の二分子会合を切り、有機酸分子を速く吸収するのですが、蒸発しやすいため有機酸の気化を抑えられないということが分かりました(図3,4)。

これらにより、精油成分の中でαテルピネオールが有機酸に高い消臭効果を示す要因として、有機酸との分子的親和性、有機酸溶解性、自己の低揮発性の化学的特性が寄与しているものと考えられ、特許出願に繋ることができました。